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【建設現場リポート】広がる!美術館建築の楽しみ方 (2023.8)

【建設現場リポート】広がる!美術館建築の楽しみ方 (2023.8) サムネイル

美術館の内装・外装工事も目に見えて仕上がりつつあります。コンセプトやCGパースから想像していた空間が徐々に目の前に立ち現われ、フロアによって異なる「空間の広がり」や「視線のつながり」など、リアルな空間体験をもって美術館を回遊する楽しさを味わえるようになってきました。仕上がりの姿を現しつつある美術館の様子とともに、美術館をつくるうえで込められた設計者の想いをお伝えしたいと思います。

▼1階「ひろま」 ⇔ 「大御堂廃寺跡」との空間の一体性
鳥取県立美術館の特徴の一つとして、建物の中央部分に自由に入れる「ひろま」があり、屋外に見える芝生の広場(史跡公園「大御堂廃寺跡」)と緩やかに一体性をもち、水平的な広がりを直観的に感じられることがあげられます。「ひろま」と「大御堂廃寺跡」を隔てるガラス壁は緩やかに湾曲していることもあり、広がりある空間にも“へそ”のような中心性があります。「ひろま」のどの位置に立っても感覚的に「大御堂廃寺跡」の中央側へと目が向き、そこで繰り広げられる人々の様子を眺めたり、そちらへ向かいたくなるような気持ちになります。

▼2階「テラス」 ⇒ 「大御堂廃寺跡」への視線のつながり
ここ2階「テラス」も自由に利用できるスペースでもあり、大空へ視線をあげて深呼吸したくなるような開放的な場所です。2階という高さもあり、「大御堂廃寺跡」と少し距離を保ちながら、そこで活動する人々を眺め、ゆったりと寛ぐこともできます。例えば子連れファミリーであれば、体を動かしたい子どもたちは「大御堂廃寺跡」でのびのびと遊び、ゆったりと過ごしたいお父さんやお母さんは、テラスのテーブル席に腰かけて子どもたちを見守りながら、時には「おーい!!」と手を振りあったりというシーンも想像できます。1階「ひろま」の水平的な空間のつながりとはまた異なる、それぞれが思い思いに過ごしながらも視線を介したつながりが持てる場所です。さらに、大御堂廃寺跡と連携した大規模イベント等では、この2階「テラス」を舞台として活用することも可能です。大御堂の芝生を観客席として、美術館を背景に、この舞台で様々な美術に関連した活動が展開することになります。

▼2階吹抜け / 思いがけない視界の広がりを生む
2階には「エントランス」と「ひろま」の上部にそれぞれ吹抜け空間があります。この吹抜けを取り囲むように回廊がめぐらされており、フリースペースの「テラス」や各「ギャラリー」、有料ゾーンの常設展示室へアクセスできます。来館者は目的の場所へ向かう道すがら、作品や人々の活動、外の風景など、思いがけず様々なシーンが視界に飛び込んでくると思います。目的の展覧会を見た後はゆっくりと館内を巡り、倉吉の山並みや館内の様々な活動など目に映るものの変化を楽しみながら、予期しない発見や出会いに心躍らせる。そんな仕掛けがあちこちに施されているのです。

▼3階「展望テラス」 / 倉吉という町とのつながり

3階まで上がると、地上から約13メートルという高さもあり、1階や2階とは全く異なる景色が広がっています。「大御堂廃寺跡」の奥へ連綿と続く中国山地の広がりに目が行き、倉吉の街のスケール感や山陰地方特有の土地の形を自然と感じられるのではないでしょうか。

また、3階「展望テラス」の天井高さは約2.7メートルであり、1階と2階の天井高さに比べ、とても低く設定されています。あえて低く視界を狭めることで、3階に立った時の視線を上方ではなく水平方向や奥方向、そして下方へと向かわせることを考慮しています。さらに3階「展望テラス」は、2階「テラス」と屋外階段で繋がっており、上り下りの道中、視界の変化をより楽しめる場所でもあります。「大御堂廃寺跡」へ見下ろすダイナミックな抜け感や、晴れた日は鳥取県の象徴的存在である大山の雄大な姿を望むことが出来ます。

空間の広がりの捉え方、そして視線の向け方など、人間の感覚的なところを考慮しながら建物が形作られていることに今回は的を絞ってご紹介しましたが、まだまだ語りつくせない様々な想いが至る所に込められています。その眼差しを通して空間を体験することは、美術館の楽しみ方をより広げてくれると思いますので、今後も少しずつそのエッセンスをお届けしていきたいと思います。

次回のリポートもお楽しみに!!

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