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2023.12.27

【建設現場リポート】 細部への配慮から立ち上がる美しい空間(2023.12)

秋の「開館500日前プレイベント」から早1カ月以上が経過し、2023年もあとわずかとなりました。今年を振り返りますと、1月は3階床コンクリート打設中で、まだ美術館の姿形があらわになっていなかったことを思いますと、とても速いスピード感で美術館が完成しつつあることを実感します。建設現場の視察を重ねるごとに立ち上がる空間に、いつも心躍る思いでいますが、その背後には設計者や施工者の細やかな配慮があってこその賜物です。今回は、そのいくつかをお届けしたいと思います。

▼大屋根と天井
02-750x445 【建設現場リポート】 細部への配慮から立ち上がる美しい空間(2023.12)大らかにすっと水平にのびる大屋根の様子にうっとりとされている方も多いのではと思います。これは大屋根の印象的な木格子天井が見る人の意識にすっと入ってくるように、まわりに取合う素材や形を出来るだけシンプルにつくり、精度よく施工がされているという工夫によるものです。例えば、アルミパネルと笠木の目地がぴったりと合うように整理し、屋根の陰影を映す外壁を白い塗装で仕上げ、ガラスカーテンウォールの整然としたサッシのおさまりが挙げられます。この静的な美しい佇まいがあるからこそ暖かみのある木格子天井が引き立てられ、美しい姿が実現しています。

▼吹抜け空間の階段
03-750x494 【建設現場リポート】 細部への配慮から立ち上がる美しい空間(2023.12)吹抜け空間には軽やかに浮遊するような階段があります。本来階段を支えるためには複数の柱が必要なところを、無柱で実現しています。また、素材と素材のつなぎ目を透かし目地にし、部位ごとに白い素材の色合いや風合いを微妙に変えることで、ささやかな陰影が生まれます。すっきりとした印象が際立ち、私たちの目にシンボリックな存在として立ち現われます。

▼展示室の天井
04 【建設現場リポート】 細部への配慮から立ち上がる美しい空間(2023.12)美術館の展示空間は、照明や空調、そして可動壁など様々な要素が必要不可欠です。鳥取県立美術館の展示室は、天井に現われるこれら要素を整理し、作品が主役となるようにすっきりとおさめています。

▼カーテンウォール
05-750x362 【建設現場リポート】 細部への配慮から立ち上がる美しい空間(2023.12)美術館の各面に大きなカーテンウォールがありますが、1階「ひろま」では緩やかな曲面を成しています。実はこれらすべて同じ規格のユニットカーテンウォールです。細部のおさまりが統一されていることで、美術館全体の意匠にまとまりを感じられます。

▼開口部分
06-750x278 【建設現場リポート】 細部への配慮から立ち上がる美しい空間(2023.12)白を基調とした美術館の空間ですが、居室の扉や展示室の入口といった開口部は濃灰色で塗装されています。こうすることで、出入りに伴う汚れや傷が目立ちにくくなり、また壁面と開口部のコントラストが付くことによって、一般の方だけでなく弱視の方にとってもその位置を認識しやすくなるようにしています。

▼ガラスサッシ
07-750x278 【建設現場リポート】 細部への配慮から立ち上がる美しい空間(2023.12)ショップとカフェの間や階段室などにガラス壁がありますが、垂直のサッシを細く見えるように工夫し、大きな一枚のガラス壁として見えるようにしています。

設計者や施工者の細やかな配慮、こだわりポイントが美術館の空間の中にはまだまだたくさん隠れています。今回ご紹介したポイントだけでなく、「もしかしてこの部分もこだわりかな?」と想像してみることも建築空間の楽しみ方を広げてくれるかもしれません。

2024年3月末にはいよいよ竣工という節目を迎えます。今後のリポートでは、最終の仕上がり状況や竣工式の様子などお届けしたいと考えています。楽しみにお待ちください!

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